2023年8月20日日曜日

⭐︎私たちは何者?ボーダレス・ドールズ⭐︎松濤美術館にて

古人形を常日頃商いする身としては、やはり行かなければならない展覧会である。というのは大義名分で、単に観たかった。
夏休みだしお盆だし、混んでるだろうなと、やや引き気味で会場へ。
松濤美術館は久しく行っていない。渋谷から歩く道筋も覚えていない。井の頭線をたった一駅使う。こちらも渋谷駅大改装以来利用していない。乗り換えがかなり難しく、気分はもう観光。なんだかね、東京中がめちゃくちゃに壊されていて、渋谷もね、一緒だね。
ああ、はなから脱線。

本題。
今回の目当てはチラシ主役の女の子、村上隆Ko²ちゃん、人間国宝生人形の安本亀八が幾つか出ているのは絶対に見逃せない、ほかツイッターで見かけた松崎覚氏のドストエフスキーも気になる。
人形代(ひとかたしろ)から観ていくはずが、左右逆になり、リカちゃんからになる。気づいて人形代から改めて。
今まで、人形代、とは言わず、形代、と言っていたが、ここにある念の籠ったものたちは、ヒトが最初に冠されるべきものだなと。三つに割って池の底に沈めてあったって、怖いよ!
オシラサマ、静鎰にして強げなものを秘めていそう。台の漆塗は後世のもの?
年代ごとに展示分けしていて、観やすい。しかもケースをやや中央寄りに設置してあるので、後ろも観ていい。なんという親切な。
見物客はまあまあ多いが人酔いするほどではないので、一つ一つの作品をじっくり堪能できる。しつこいくらい、裏を検める♪
平櫛田中も堀龍女も、ぐるぐる廻る。うれしすぎる。素晴らしい松濤美術館。
ずっと気になっていた松本順先生の人形。安本亀八作。髭はご本人の本当の髭だそう。この方が大磯ロングビーチを開いてくれたから海水浴ができるようになったとか。実にきりっとした佇まい。吸い込まれそう。瞳、足元、姿勢、写真も見たことがないのに、なぜそっくりだ〜って思ってしまうのかな?
この松本順の人形あたりから最後の村上隆までの流れが大きな見せ場になっていて、四谷シモン作のルネ・マグリットの男、松崎覚作ドストエフスキー、天野可淡作の擬人化された猫、その他の迫力のある人形がぐいぐい迫ってくる!
行ってよかった。
できれば自分へのお土産ってことで、絵葉書とかクリアファイルとかボールペンとか、買いたかった。
ミュージアムショップ、作ってくださーい。

2023年8月17日木曜日

*コンペティション*ペネロペ・クルスその2

名画座にて2本立て。
疲れるから迷ったけど、まあたまにはいいか。
観たことない役者さんだし、美人だし、ということで。
しっかりまとめて、2本観た。
監督:ガストン・ドゥプラット、マリアノ・コーン
主演はペネロペ・クルス、脇にアントニオ・バンデラス、オスカル・マルティネス
スペイン、アルゼンチン合作
2021

いやいや、もう、笑っちゃう。だって、みんながみんな変なんだもん。
え、パラレルマザーズと全然違うんですけど、ペネロペさん♪
なんて芸達者なのぉ。
そして、なぜそんなに頭髪が爆発しておられるの?
惚れるぜ、姐さん。
アントニオ・バンデラスのぶっ飛んだシャツがダサくてセンス超えててよい。蒲田行進曲の銀ちゃんのネクタイみたい。

劇中劇が面白い。ほんとにこの小説ってスペインでは存在しているのかな、ないのかな、あるなら読んでみたい。セットも映画というより舞台のよう。
でもって、映画の話もめちゃくちゃなら、劇中劇もすこぶる奇妙。
こういう監督だとスタッフも役者も大変だよねえとか、同情していると、しっかり楯突いてくる主演男優ふたり。
そりゃそうだろうとも。
だがそれにしても、なんでこんなに3人ともわがままなんだ。
いいねえ、楽しいったらない。もしこの監督のマネージャーになったりしたら、きっと胃潰瘍になっちゃう。映画だからこそ、笑っていられる。
小気味良く物語が進むけど、終盤がまた一筋縄ではいかない。
なにげに挟み込まれたシーンもしっかり伏線になっていて、ありゃりゃ、そう来たか!と驚く。
ペネロペクルスの家ってことなのかな、障子があって、ちょっと和風。あの家のセットって、配信とかでは広さが見えてこないねえ。 
ブラック・コメディだけど、画像も物語も奥行きのある作品。

2023年8月15日火曜日

*パラレル・マザーズ*ペネロペ・クルスその1

スペイン、フランス合作映画
2021年
監督:ペドロ・アルモドバル
主演:ペネロペ・クルス
スペインってこういう風景なのか、行きたかったなあ。もう行ける機会もないだろうなあ、と、随所で残念がっていた。景色や空気の色がからりとしている。ちょうどこの重いテーマを背負った映画が、あんまり重たく感じないうちに、むしろ、お、いいじゃん!よし明日もがんばろ、となって終わっていくのにも似た雰囲気。
ペネロペ・クルスは初めて。今までご縁がなかった。優しそうな人。
ここでは、きちんとして自分の足で立ってる女性の役。
仕事のときはきりりと勇ましくたおやか。加えてお友達の社長さんもかっこいい男気のある女の人。
もう一人の主人公とも言えるミレナ・スミット。新人?だろうけど、大女優の前で臆することがない。それだけで立派だ。しかもチャーミングで、ディオールのジャケットを軽く着こなしてとても素敵♪
産院でのマタニティもよかった。地模様が刺繍なのか、少し立体的で可愛らしく、気持ちが和らぎそう。
スペイン内乱のことがもう一つのテーマだけど、できればこちらのみでアルモドバル監督に撮って欲しい。できるだけ早く。この内乱が世界大戦、二度の原爆での大量虐殺となっていった、負の歴史を記憶にはっきり留めるために。
ペネロペ・クルス2に続く 〜コンペティション〜